解体騒ぎ

ある静かな朝。

私の家の隣に住む実家の母からメールが届きました。

「なんか電線を外す工事してるけど。解体するって言われて電線を外しに来たって言っている。」

えーっ!

慌てて弁護士さんに連絡です。

フーム。「インターネット回線の撤去工事の可能性はありませんか?」ハア⁇電話じゃなくて電気だし。

そもそも電気を止めるだけなら電気工事は必要ないので、いよいよ解体業者が来るのは時間の問題だと確信しました。

 

そして翌日。

解体業者が「明日から解体工事をする」と言って挨拶回りに来たのです。

あした⁇そんな急な話⁇

弁護士さんにすぐに連絡をし、弁護士さんからこの家は係争中のため解体できない旨を説明して、解体はストップしました。

 

一安心、、と思いきや、その夜。

夫と夫の母親が実家にやって来て、「調停は取り下げられている。この家は解体する。」と言ってきたのです。

家のローンは夫が完済したばかり。残りの借金1000万ほど現金で支払って完済したようです。そして次は解体すると言い張る始末。どうしても渡したくないというただの意地でしょうが、あまりにも馬鹿げています。解体費用だっておそらく300万くらいするはず。あれほどお金に執着していて、こんな時は損得勘定も出来ないのでしょうか。いよいよ頭がどうかしている。正気の沙汰ではありません。そして夫の母親もなぜ息子を説得できないのでしょうか。その狂気が怖くて、平静ではいられませんでした。

 

とにかく家が解体されるとなれば持ち出しておきたいものが山ほどありました。

子供達の卒業アルバム、子供達が大事にしていた本や漫画、写真、誕生日に買ってあげたDVDやバースデーカードなどなど。何よりも息子達は自分で選びたいだろうと思い、急遽、離れて一人暮らしをしている長男にすぐに帰ってくるようメールをし、荷物を運び出しておくよう伝えました。

解体業者が来たその夜、急遽帰ってきた長男と2人で電気のつかない家に入り、荷物を運び出しました。

夫が寝ていたベッドはそのまま臭い匂いを放ち、家の中にはゴミが散乱し、夫の実家にあったであろう見たこともない要らない古タイヤや衣装ケース、子ども自転車、古いラジカセ、テーブル、椅子まで持ち込まれていました。そして自分達が欲しいものだけごっそり持っていったのです。遮光性の高いカーテンやデザインの素敵な高価な椅子、トイレットペーパーなどの消耗品、大型鏡、中身を抜いた衣装ケース。他は全て放置するかゴミ袋です。子供部屋ももちろん荒らされ、部屋にはビリビリに破かれた家族写真が。それを見た息子は「ドラマだ、、、」。悲しいようなおかしいような。怖くて得体の知れない不気味さだけが残りました。